国民年金とは別に老後資産を貯蓄していくことができる方法として、「iDeCo(イデコ)」という個人型確定拠出年金が利用できる制度があります。
iDeCoによる積立投資で資産運用を行うことで、掛け金がすべて控除されたり運用益が非課税だったりと大きな節税効果が得られる特徴を持っています。
2017年から加入資格も広くなった為、iDeCoを始めたいと考えている方は増えてきているんじゃないかと思います。
節税効果がある!と言われても、「個人型確定拠出年金って?」「iDeCoって?」のように疑問に感じている方も多いかもしれませんね。
そこで今回は、iDeCo(イデコ)のメリット・デメリットをできるだけわかりやすく解説していこうと思います。
個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)とは?
iDeCo(イデコ)には、2つの確定拠出年金制度が設けられています。
- 個人型:個人の加入を対象とする制度
- 企業型:企業規模の加入を対象とする制度
ここで解説していくのは、個人単位で加入できる「個人型確定拠出年金」になりますね。
今ではiDeCoと呼ばれていますが、以前は「401K」や「DC」とも呼ばれるものです。
年金と言えば「国民年金」と「厚生年金」がよく知られていますが、iDeCoは公的年金とは違って毎月積立額を自分で設定することができる私的年金です。
20歳から60歳まで継続的に積み立てることができるiDeCoは会社員の方や公務員の方、自営業者や主婦の方などによって毎月積立可能な上限金額が変わってきます。
第1号被保険者とは
国内に住所がある第2号・第3号以外の人(自営業者、学生、フリーターなど)
第2号被保険者とは
厚生年金や共済組合に加入している人(会社員、公務員など)
第3号被保険者とは
第2号の配偶者で扶養を認められている人(主婦(夫)、パート)
このように職業や立場の違いによってiDeCoで積立できる上限金額が決まっていますが、必ず上限額を積み立てる必要はありません。
iDeCoは毎月5,000円から1,000円単位で設定することができるので、無理のない範囲から積立を進めていくことが可能です。
iDeCoには加入資格がある
- 日本にお住まいの人
- 20歳から60歳未満
- 国民年金を納付している
- 企業型確定拠出年金の未加入者(※1)
※1 一定の条件(掛金が年間42万円以下など)を満たしている場合は加入可能
個人型のiDeCoは国民年金に上乗せする形の私的年金なので、公的である国民年金が未納だったり免除されている場合は加入できません。
企業型のiDeCoに加入している人は条件次第で個人型にも加入できますが、原則としては加入できない仕組みになっています。
iDeCoの運用方法は2種類ある
- 元本保証型:定期預金
- 元本変動型:投資信託
定期預金は元本割れリスクのない元本確保型の商品ですが、金利は0.01%~とリターンにはほとんど期待できません。
対して投資信託は株式や債券などに投資できる為、元本保証こそありませんが将来的なリターンに期待できます。
リスクを取らずに安全な積立がしたい!という方は、定期預金で堅実に運用していくことはできますね。
ただし、iDeCoの運用には毎月定期預金よりも高額な手数料が発生します。
定期預金だけに頼ってしまうと、実質的に資産が目減りする可能性があるので注意しておきましょう。
iDeCoでは定期預金と投資信託を併用して分散投資することも可能なので、その辺もよく考えた上で資産運用の方針を決めていくといいですね。
iDeCo(イデコ)のメリットは5つ
1つ1つわかりやすく解説していきますね。
メリット①:毎月5,000円から始められる
公的年金の場合は自分で金額を決めることはできませんが、iDeCoによる積立なら月々5,000円から気軽に始めることができます。
先程もお伝えしたように上限金額を必ず積み立てる必要はないので、自分の生活スタイルに合わせて老後資金の積立が可能です。
老後の生活を楽しく過ごすには公的年金だけでは不安があるので、自分でコツコツ資産を作っていくことも考えておくのがいいですね。
iDeCoの資産運用は60歳までと制限があるので、始めるならできるだけ早い方がいいでしょう。
メリット②:積立した掛け金が全額所得控除
iDeCo最大のメリットとも言えるのが、積立投資した掛け金すべてが所得控除されて所得税と住民税が軽減されることですね。
とはいえ、どれくらい税金負担が軽減されるのかがイメージしづらいかと思います。
そこで会社員の人の場合で節税効果をシミュレーションしてみたデータを見てみましょう。
- 30歳会社員
- 年収500万円
- 企業年金なし
- 積立額23,000円/月
- 積立期間30年
iDeCoによる節税額
年間55,200円
30年間で1,656,000円
上記の結果で考えると、iDeCoで積立しているかしていないかで年間55,200円の差が出てきますね。
これは少し考え方を変えると、ただお金を積み立てただけで55,200円が増えたと捉えることもできます。
利回り計算すると年率20%という凄い数値になるので、定期預金が0.01%ですから圧倒的な利益率ですよね。
資産運用による運用益がさらにここに加わるので、上手く積み立てていくことができれば将来的にも期待が膨らみますね。
メリット③:資産運用による利益は非課税
iDeCoは掛け金の所得控除だけでなく、運用期間中に発生した利益に対する税金も非課税となっています。
基本的には定期預金の利息や投資信託の運用益に対して、20.315%(所得税+住民税)がかかるので利益を全額受け取ることができません。
例えば年間利益が10万円あった場合は、約20%の税金が差し引かれて残るのは8万円になりますね。
iDeCoならそんな税金の心配がないので、利益を無駄にすることなく受け取ることができるのは嬉しいところです。
本来なら税金で差し引かれるはずだった資金を再投資に回せるので、効率的に資産拡大を狙っていくことができますね。
メリット④:運用資産の受取り時も非課税
これまでにiDeCoで運用してきた資産は、60歳~70歳のうちに以下の3パターンから受け取り方法を決めることができます。
- 一時金で一括受取り
- 年金で分割受取り
- 一時金と年金の両方で受取り
そして一時金として受け取るなら「退職所得控除」が適用され、年金として受け取るなら「公的年金控除」が適用されて節税することができます。
もう少しイメージできるように、退職所得控除が受けられる一時金として一括受取りする場合の一例を見てみましょう。
- 30年間積立
- 総資産は1,000万円
800万円+70万円×(30年(積立期間)-20年)
=控除額1,500万円
※積立期間が20年以下なら最大800万円まで控除
このような計算式に基づいてiDeCoの運用資産を非課税にすることができます。
ここでは受け取り資産が1,000万円に対して、控除額が1,500万円まであるので税金はかかりません。
ただし、企業からの退職金が高額になる方は課税対象になってしまう可能性もあるので、iDeCoの受け取りを少しずらすことで非課税にするのがいいですね。
また、公的年金控除が受けられる年金として分割受取りする場合は以下のようになります。
- 65歳以上で受取り
- 分割回数10回
- 総資産は1,000万円
100万円×100%(割合)ー120万円(控除額)
=課税額0円
※公的年金等も金額に合算される
※65未満の受取りは控除額70万円まで
65歳未満で分割して受け取るときは、公的年金などを含む収入の合計額が70万円までは非課税にできます。
65歳以上から受け取るときは、上限が上がって120万円までは非課税になりますね。
こういった形でiDeCoなら運用資産の受け取り時も無駄にすることはありません。
メリット⑤:投資商品が低コスト
投資信託で投資を進めていく場合は、投資商品を購入して保有していくために「信託報酬」を支払っていくことになります。
この信託報酬にかかるコストが高いと利益率が下がってしまいますが、iDeCoで取り扱っている多くは低コストの投資商品が中心となっています。
例えば信託報酬が1%の投資商品を10万円で保有した場合、手数料として1,000円がかかるイメージですね。
iDeCoでは1%以下の投資信託が数多く揃っているので、極力コストを抑えた資産運用ができます。
また、一般的な投資信託では購入時に発生する「購入手数料」がかかる場合もありますが、iDeCoでは基本的に購入手数料が無料なものばかりです。
長期的に積立していく資産運用は、ちょっとしたコストの違いで将来的に大きな差に膨れ上がっていきます。
そんなコスト面に優れた商品選びができるのもiDeCoのメリットと言えますね。
iDeCo(イデコ)のデメリットは4つ
デメリットについても1つ1つわかりやすく紹介していきますね。
デメリット①:投資信託だと元本割れリスクがある
iDeCoの定期預金に預けている場合は元本保証がありますが、投資信託で積立を行っていく場合には元本保証がありません。
定期預金は利息が約束されている半面わずかな金利しか得られないので、iDeCoで利益を期待するなら投資信託に積立していくことになります。
投資信託は定期預金よりも利益率が高い分、市場の変化によって価格が常に変動するので元本割れのリスクを伴います。
できるだけリスクを避けたいという方は、定期預金の割合を増やして所得控除のメリットを中心に考えるのも1つの方法ですね。
または投資信託を広く分散して投資することで、リスクを軽減させるのがいいかと思います。
デメリット②:運用には手数料が結構かかる
iDeCoは非常に節税効果の高い私的年金制度なんですが、iDeCoに加入するときや運用期間中に手数料を支払う必要があります。
主に手数料として発生するのは以下のものです。
- 加入時または移換時:2,829円
- 毎月の手数料:171円
例えばiDeCoに新規加入から30年間運用を続ける場合は、「2,829円+171円×12ヶ月×30年」で総コストが64,389円になりますね。
iDeCoを取り扱っている金融機関によっては、この他にも運営管理手数料がかかる場合もあるので、金融機関はよく考えて選ぶ必要があります。
デメリット③:資産の引き出しは60歳までできない
iDeCoの運用目的は「老後の資産を作ること」ですから、原則60歳になるまでは積み立てた資産を引き出すことができません。
「急にまとまったお金が必要になったから」という場面に、臨機応変に対応できないのがiDeCoのデメリットですね。
途中で解約することも基本的には認められていません。
なのでiDeCoでの資産運用は「老後資金」という認識で始めることが大切ですね。
ただ、途中解約や引き出しが60歳までできないといっても、毎月の積立金額を調整したり一時的に中断することは可能です。
出費が重なってしまって資産運用に回すお金がないというときは、無理に投資しなくていいのは安心できるポイントですね。
60歳になるまで待てない!という方も中にはいるかと思うので、そんな人におすすめなのが「つみたてNISA」です。
つみたてNISAは少額から始められて運用益も非課税にできる制度なので、興味がある方は以下の記事を参考にされてみて下さい。
デメリット④:選べる投資信託が少ない
iDeCoでは低コストな投資商品に積立できる反面、選べる商品の種類があまり多くないので投資先はある程度限定されます。
これは投資経験者からすると、選択肢が限られてしまうことはデメリットと言えますね。
ただ、逆に考えると数が少ないことで投資商品が選びやすくなるので、投資初心者にとってはメリットと感じるところでもあります。
とはいえ、分散投資でリスクを抑えるという意味では投資信託の数は多い方がいいので、金融機関を決める際にはその辺も考慮するのがいいでしょう。
iDeCo(イデコ)はこんな人におすすめ!
- 公的年金だけでは将来が不安
- 投資で税金を安く抑えたい
- 少額投資で地道に積み立てたい
- 元本保証のある投資を探している
- 投資信託の銘柄が多すぎで選べない
iDeCoは職業別に毎月の積立金額に上限が決められていますが、まとまった投資ではなく老後の資産作りとして少額からコツコツ積み立てることが目的です。
投資信託によるリスクが心配な方でも定期預金として預けることもできるので、自分のスタイルに合わせて使い分けることができますね。
何よりiDeCoは所得税や住民税、運用益や受け取り時まで節税効果があるメリットの多い制度です。
iDeCoを利用するとしないとでは税金額が全く違ってくるので、今まで税金をなんとか安くしたいと感じていた方はiDeCoでの積立を検討していきましょう。
iDeCo(イデコ)はどうやって始めるの?
- iDeCoを利用する証券会社を決める
- 申込書類を資料請求する
- 届いた申込書類の記入及び返送
- 加入審査・手続き完了後に通知書類等が届く
- 指定口座から掛け金の引き落としが開始
※国民年金基金連合会の審査等で1ヶ月~2ヶ月程度かかります。
iDeCoで積立を始めるためには、まず利用する証券会社から必要書類を資料請求することになります。
現在ではオンライン上で全ての手続きが完了するものが増えてきていますが、iDeCoではそれができないので少し面倒に感じるかもしれませんね。
書類が届いたら「基礎年金番号(年金手帳で確認可)」や「本人確認書類(コピー)」などが必要になります。
また、国民年金基金連合会の審査等で1ヶ月以上がかかるので、実際にiDeCoで運用が開始できるのは結構先の話になります。
iDeCoで資産運用を始めると決めたら、早めに申し込み手続きをを進めておくのがいいかと思います。
iDeCoのおすすめな証券会社は?
上記3つの証券会社はよく知られている大手なので安心感があり、iDeCoの運用時には最低限の手数料だけなのでコストを抑えることができます。
SBI証券は中でも取り扱っている投資信託が断トツで多く、コストも低く設定されているので魅力的な証券会社ですね。
楽天証券とマネックス証券は投資商品こそ、そこまで多くはありませんがトータルコストでは負けず劣らずの人気な証券会社になっています。
iDeCoを始めるには最適な証券会社と言えるので、まずはこの辺をチェックして吟味していくのがいいかと思います。
iDeCo(イデコ)のメリット・デメリットまとめ
最後にiDeCoのメリット・デメリットをまとめておきますね。
- 毎月5,000円から始められる
- 積立した掛け金が全額所得控除
- 資産運用による利益は非課税
- 運用資産の受取り時も非課税
- 投資商品が低コスト
- 投資信託だと元本割れリスクがある
- 運用には手数料が結構かかる
- 資産の引き出しは60歳までできない
- 選べる投資信託が少ない
今は公的年金だけで安心した老後が送れる時代ではなくなってきているので、個人型確定拠出年金のiDeCoを利用しようと考えている方は多いと思います。
iDeCoがどんな制度でどんなメリット・デメリットがあるのかを理解すると、その重要性に気がつく方も多いかもしれませんね。
老後の資産を作るという目的ながら、資産運用による節税効果も非常に高い制度なので活用しておいて損はないでしょう。
iDeCoで積立を行うなら早いに越したことはないので、まずは資料請求から始めていきましょう!
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