2019年6月3日に金融庁が発表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」で、老後資金が2,000万円も必要なのか…と心配している方もいますよね。
報告書の内容をザックリまとめると、
- 公的年金だけでは毎月5.5万円ほど不足する
- 95歳まで生きる場合、年金以外に資金2,000万円が必要
- 少額からでも長期・積立・分散投資による資産形成を行う
つまり、定年後に夫婦で95歳まで生活するには、年金とは別に「5.5万円×12ヶ月×30年」の老後資金を貯蓄する必要があるということですね。
公的年金だけでは老後破綻する可能性が高いため、早いうちから資産形成を進めていく行動が大切だということでしょう。
そもそも金融庁の報告書では、高齢夫婦の無職世帯の平均収入と支出が前提なので、受け取れる年金額が少ないと2,000万円でも安心できません。
そこで今回は、将来必要な老後資金はいくらなのか、年金とは別に老後資金を作るための方法を解説していきます。
【老後資金の要点まとめ】
- 年金を満額受け取っても2,000万円以上不足する
- ゆとりある老後生活は4,500万円以上が必要
- 老後資金は預金ではなく資産運用で貯蓄する
- つみたてNISAやiDeCoで節税も意識する
そもそも年金は将来いくらもらえるのか
まずは年金について簡単にご紹介しますね。
公的年金には、20歳以上の方なら誰でも加入できる「国民年金」と、会社員やサラリーマンが加入する「厚生年金」があります。
20歳以上かつ60歳未満の人は必ず加入する老齢基礎年金のことです。
定額保険料(2019年度は月16,340円・2020年度は月16,540円)を10年以上支払っている人が支給対象で、65歳から受け取りが可能です。
40年間、払込を行った基礎年金の満額支給額は月額約65,000円(2019年度)になっています。
会社員や公務員の人を対象とした年金で、基礎年金に上乗せして支給を受けることができます。
厚生年金保険料率は18.3%(平成29年時点)であり、半分は企業側負担となるので9.15%が本人負担分です。
月給と賞与を合わせた平均額や払込期間によって厚生年金の支給額が異なり、基本的には65歳から受け取ることができます。
厚生年金支給額の計算方法
国民年金(基礎年金)は加入期間に応じて簡単に計算することができますが、厚生年金は少し複雑なのでわかりやすく解説しておきますね。
65歳以降から受け取れる厚生年金は「報酬比例部分」となる年金額で、計算式は以下のようになっています。
平均標準報酬月額×生年月日に応じた率×厚生年金加入月数
- 平均標準報酬月額:(月収×12+賞与)÷12
- 生年月日に応じた率:5.481/1,000(※1)
- 厚生年金加入月数:2003年4月以後の月数
※1:1946年4月2日以降生まれの率になります。
参考:日本年金機構 老齢年金
例えば、月収25万円・賞与60万円の方は、平均標準報酬月額が「360万円÷12=30万円」になりますね。
この平均月額のまま40年間就業した場合は、「(30万円×5.481)×(0.001×480ヶ月)」となるので、支給額の目安は年間789,264円(月額65,772円)です。
夫が就業している間、妻が専業主婦であれば満額の国民年金2人分と合わせて、年間約235万円(月額約19.6万円)の支給が受けられるイメージです。
長寿化によって老後資金はより多く必要になる!?
金融庁の報告書では、夫婦がそれぞれ95歳まで生きることが想定されています。
ただ、厚生労働省が調査したデータによると、平成29年度(2017年度)で95歳まで生存する可能性は男性が「9.1%」、女性が「25.5%」となっています。
生存割合は年々上昇傾向にありますが、男性は女性と比べてまだまだ低い割合と言えますね。
また、日本人の平均寿命は男性が「81.09歳」、女性が「87.26歳」となっています。
直近5年で男女ともに約1.5歳ほど上昇していることから男性は約47年後、女性は約26年後に平均寿命が95歳に到達するのかもしれません。
今の世代だと、95歳まで生きられるのは一部の高齢者だけと言えそうですね。
とはいえ、何歳まで生きられるかは自分自身で決められることではありませんから、ある程度長生きすることを想定して老後資金を準備するのが望ましいでしょう。
不足する老後資金は本当に2,000万円なのか
金融庁の報告書によれば、夫65歳以上・妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯で、公的年金を含めた実収入は月209,198円です。
これは「総務省「家計調査」(2017年)」のデータですが、これに対して消費支出は月263,717円なので不足額は54,519円。
毎月約5.5万円の不足として、65歳から老後生活を30年間とした場合に約2,000万円の資金が足りないと指摘しています。
ただ、総務省で公開された2018年度版の調査データでは実収入が月222,834円、消費支出が月264,707円で不足額は41,873円と減少しています。
引用元:総務省「家計調査」(2018年)
毎月約4.2万円の不足であれば、65歳から30年間老後生活を過ごすなら約1,500万円の資金でカバーすることができます。
高齢単身無職世帯だと、さらに不足額は少なくなりますね。
ただ、これはあくまでも「生活費」の範囲なので、生活スタイルによって必要資金は大きく違ってきます。
介護・リフォームなどの費用も想定しておく
平成30年度(2018年度)の生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」によると、
- 初期費用:平均69万円
- 月額費用:平均7.8万円
- 介護期間:平均4年7ヶ月(55ヶ月)
老後に必要な介護費用の目安は498万円
このように約500万円ほどは準備しておく方がいいですね。
また、平成31年度(2019年度)の住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォーム潜在需要者の意識と行動に関する調査」では、
- リフォーム予算(戸建て):平均約269万円
- リフォーム予算(マンション):平均約262万円
少し余裕を持って約300万円ほどは見ておいた方がいいかもしれません。
これは目安となる平均値ですが、万が一に備えて介護期間を10年以上にしたり、リフォームにもっとお金をかけたい人もいますよね。
必要なければある程度費用を減らせますが、介護・リフォームなどで800~1,000万円ほどの資金を準備することも考えておきましょう。
老後生活を安心して過ごすための必要資金はいくら?
そもそも金融庁の報告書で前提としている老後の生活費は、どのくらいの水準なのか気になっている方もいるんじゃないかと思います。
総務省の2018年度版でわかった調査結果では、高齢夫婦無職世帯の実収入が月額約22.3万円ほど。
ですが実は、月22万円というのは夫婦2人で老後生活を送る上で「最低日常生活費」となる平均水準です。
例えば、老後に旅行やレジャーを楽しんだり、身内との付き合いを行うなら、消費支出がさらに上乗せされることになります。
「ゆとりある老後生活を送るための費用」を考えると、老後資金はより多くなることが想像できますね。
ここで言うゆとりある老後生活費は、平均で月34.9万円(年間418.8万円)が必要と調査結果が出ています。
引用元:生命保険文化センター 平成28年度「生活保障に関する調査」
つまり、国民年金(夫婦2人分)+厚生年金で月22.3万円の支給に対し、月34.9万円の支出額になるので、生活費だけでも月12.6万円の赤字です。
仮に比較的生存する可能性のある90歳まで生活できるなら、65歳から25年間として約3,800万円が不足することに…
先ほどの介護・リフォーム等も考えると、最低800万円を上乗せして公的年金とは別に約4,600万円は準備する必要がありそうですね。
個人事業者はさらに老後資金が不足する
会社員・サラリーマンの方であれば厚生年金が支給されますが、個人事業主・フリーランスの方は基本的に国民年金(基礎年金)だけです。
夫婦で自営業をされている場合は月13万円しか貰えないので、老後の平均的な生活費の2分の1相当しかないですね…
普通に老後を過ごす上での支出は月額約26.5万円ですから、65歳から25年間生活するなら「13.5万円×12ヶ月×25年」で約4,000万円の不足になります。
ゆとりある老後生活を送るためには、「21.9万円×12ヶ月×25年」で約6,600万円も足りません。
その他の費用も含めると7,000万円以上も不足することになりますね。
会社員の方は企業によって「退職金」がありますから、1,000~2,000万円は確保できる場合もあります。
個人事業主やフリーランスの方は、特に老後資金に関して対策を行っていくことが重要だと言えます。
夫婦2人の老後生活で本当に必要な資金の目安
ここまでで、将来受け取れる年金額や老後資金はいくら不足するのか、ということをご紹介してきました。
そこであらためて公的年金以外で、老後に必要な資金の目安をまとめておきますね。
夫が会社員・妻が専業主婦である場合
【基本的な平均支出で生活する目安資金】
- 22.3万円-26.5万円=不足4.2万円/月
- 4.2万円×12ヶ月×25年+介護等800万円=2,060万円
【ゆとりある支出で生活する目安資金】
- 22.3万円-34.9万円=不足12.6万円/月
- 12.6万円×12ヶ月×25年+介護等800万円=4,580万円
夫婦2人で自営業を行っている場合
【基本的な平均支出で生活する目安資金】
- 13万円-26.5万円=不足13.5万円/月
- 13.5万円×12ヶ月×25年+介護等800万円=4,850万円
【ゆとりある支出で生活する目安資金】
- 13万円-34.9万円=不足21.9万円/月
- 21.9万円×12ヶ月×25年+介護等800万円=7,370万円
不足する老後資金を効率的に貯蓄するためには?
公的年金を満額しっかり受け取ることができても、90歳まで生活するなら最低でも2,000万円以上は貯蓄しておくことが望ましいですね。
ですがそんな大金貯められる自信がない…という方が多いんじゃないかと思います。
一般的に知られている貯蓄方法としては以下の3つです。
- 働いて収入を増やす
- 節約して支出を減らす
- 資産運用を行う
簡単に収入を増やすなら労働が手っ取り早いですが、時間にゆとりがなければ現実的ではありません。
最も始めやすいのは節約ですが、できる範囲が限られてしまうので大きな効果は期待できないことがネックです。
そこで効果的かつ老後の資産形成に向いているのが「資産運用」ですね。
日本は預貯金が根強く、投資への関心が薄い…
これは米国と日本の金融資産額の推移ですが、米国の方が圧倒的に伸び率が高いことがわかります。
その大きな理由としては、預貯金額の割合がまったく異なることですね。
金融庁の「平成28事務年度 金融レポート」によれば、家計金融資産の割合で米国は「現金・預金13.7%」に対し、日本は「現金・預金51.7%」です。
米国では現役時代から株式・投資信託など、資産運用を早いうちから行っているため、効果的に資産形成ができているということです。
日本人は投資リスクが心配だったり、経験がないことから躊躇してしまう人も多く、興味はあっても実際にはほとんどの人が行動していません。
超低金利時代の今、預金していてもまったく増えませんから、少額からでも資産運用を始めていくことが老後の資産形成に繋がりますね。
資産運用は預金と比べて少額で目標金額に到達できる
30歳から貯金を始める場合は、毎月5.6万円ずつ貯めていくと30年後に約2,000万円の資金が作れます。
ただ、資産運用であれば年利3%で運用することで、毎月3.5万円の積み立てで30年後に約2,000万円の資金を貯蓄することができます。
資産運用は運用利益が得られるだけでなく、利益を再投資することで「複利効果」にも期待できます。
複利効果は積立期間が長ければ長いほど効果が大きくなるため、20代のうちから始めておくと貯蓄できる資産も増えますね。
現在の金融システムでは貯金するメリットはないので、銀行に眠っているお金は資産運用に回していくのがおすすめですよ。
投資リスクよりも公的年金に頼りすぎることの方が将来リスクが高いですから、個人でお金を蓄える仕組みを作ることが重要だと感じます。
老後資金を効率的に貯めるおすすめな資産運用
投資を始めるためのお金はあるけど、どんな資産運用があるのか知らない方も多いかと思います。
そこで金融庁もおすすめしている資産運用が以下の2つ。
- つみたてNISA(積立NISA)
- iDeCo(イデコ)
それぞれ「少額」から始めることができ、運用で得た利益は「非課税」にできることが大きな特徴です。
毎月一定額を積み立てするだけなので、初心者でも手軽に投資できる資産運用でもありますね。
それぞれの制度を簡単にご紹介しておきます。
つみたてNISA(積立NISA)
- 20歳以上(上限なし)で運用できる
- 毎月100円~(金融機関で異なる)
- 運用益が非課税(年間40万円×20年)
- 引き出し制限なし
つみたてNISAは、利益に対して通常約20%かかる税金を非課税にできる制度です。
証券会社や銀行などの金融機関で「NISA口座」を開設することで運用できるようになります。
口座開設時に「つみたてNISA」か「一般NISA」が選べますが、一般NISAは年間120万円まで、5年間非課税が特徴ですね。
つみたてNISAは長期的に積み立てを行って資産形成することが目的なので、老後資金に備える上でも効果的な資産運用と言えます。
年齢に上限がないため、60歳以上でも運用を始めることができます。
引き出しはいつでも可能なので、資金拘束されず自由に売却できるのも魅力の1つですね。
また、つみたてNISAの運用では投資信託の保有時に「信託報酬」という費用がかかりますが、それ以外で不要な手数料はかかりません。
信託報酬は選ぶ投信(ファンド)ごとで異なります。
つみたてNISAは低コストファンドが中心なので、初心者でも商品を選びやすい面もあります。
iDeCo(イデコ)
- 20歳以上60歳未満で運用できる
- 毎月5,000円~
- 運用益が非課税
- 掛金が全額所得控除(年間14.4万円~81.6万円)
- 受取時も一定額非課税
- 引き出し制限あり(原則60歳まで)
iDeCo(イデコ)は公的年金とは別の備えとして、将来受け取れる支給額を増やすための私的年金制度です。
こちらは運用益の非課税に加えて、掛け金が「全額所得控除」の対象になるメリットがあります。
つまり、iDeCoに積み立てすることで所得税・住民税も安くできるということですね。
例えば、年収400万円の会社員で企業年金なしの場合、毎月2.3万円の積み立てで年間約4.1万円の節税効果があります。
自営業者なら毎月6.8万円まで掛けられるので、年間約24.5万円の節税になります。
これを利回り計算すると、会社員なら年15%、自営業者なら年30%に相当する利率…
また、iDeCoは「元本保証型」商品が選べるため、運用成果より安全性を重視する人にも向いています。
ただ注意点として、60歳まで引き出しできないことと、毎月167円の手数料がかかることは覚えておきましょう。
資産運用は「つみたてNISA」から始めるのがおすすめ
iDeCoは節税効果が高く、元本保証商品を選べば運用も安定します。
老後資金を貯蓄する上でも効果的ではありますが、継続的に60歳まで積み立てできるかが一番の問題です。
定年まで安定的な収入が得られる環境でなければ、途中で積み立てできなくなることも十分考えられますよね。
また、iDeCoは「原則60歳まで引き出し不可」ですから、万が一お金が必要になっても自由に使うこともできません。
運用がストップしている間も毎月手数料がかかるため、収入面に不安要素がある場合はあまりおすすめできないですね。
それに対して「つみたてNISA」はいつでも売却(解約)できるので、柔軟かつ安心して始めることができます。
つみたてNISAは「楽天証券」が最もお得
- 100円~1円単位で始められる
- 楽天ポイントで積立投資ができる
- 楽天カード決済で1%ポイント還元
楽天証券で「つみたてNISA」を始めると、ポイント投資・還元メリットが受けられるのでおすすめですね。
積立金を楽天カード決済で引き落としすると、決済額に応じてポイント1%還元なので、他社よりもお得に運用できます。
つみたてNISAは年間40万円まで投資できるため、年間4,000ポイントを貯めることが可能。
これを20年間続けると80,000ポイントも獲得できますし、貯まった楽天ポイントは積み立てに再利用することもできますよ。
ポイントは「1ポイント=1円」として1ポイント単位から使えます。
楽天証券では100円から買い付けできますから、少額から手軽にスタートできるので始めやすいですね。
まとめ:早いうちから老後資金の資産形成をはじめよう!
- 年金を満額受け取っても2,000万円以上不足する
- ゆとりある老後生活は4,500万円以上が必要
- 老後資金は預金ではなく資産運用で貯蓄する
- つみたてNISAやiDeCoで節税も意識する
金融庁の報告書で話題になる以前から、公的年金だけでは老後破綻することは目に見えていたことです。
そもそも年金を満額受け取れるかどうかも不安なところですし、今の支給額が将来保障されているわけでもありません。
年金だけに頼るのはリスクがあるので、老後資金は自らの行動で貯蓄していくことが必要になってきますね。
2,000万円以上の老後資金を貯めるのは難しい…と感じるところですが、30年ほどの長期で見れば十分貯蓄できる額です。
ただ、預貯金や定期預金では効率が悪いため、つみたてNISAやiDeCo(イデコ)の資産運用を活用するのがおすすめです。
安心して老後生活を過ごせるよう、今から貯蓄の準備を始めていきましょう!
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