2019年10月から消費税10%が適用され、税負担が大きくなったことで今後はより一層節税に対する意識を高く持つことが必要になります。
そこで積立投資をしながら節税ができる、つみたてNISA・NISA・iDeCoが注目を集めていますね。
この3つの投資制度は、将来のための資産形成や資産運用を効率的に行えることも大きな魅力です。
つみたてNISA・NISAでは、一定の条件内での取引について、投資で得られた利益に対する約20%の税金がかからず、非課税でお得に運用することができます。
個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は、掛け金が全額所得控除されて税金が安くなるメリットもあります。
そこで今回は、節税できる投資制度であるつみたてNISA・NISA・iDeCoをわかりやすく解説し、どれがいいのかおすすめもご紹介します。
【この記事の要点まとめ】
- 初心者なら少額投資で始めやすいつみたてNISA
- 短期でまとまった資金を運用するならNISA
- 所得控除など、節税効果が大きいのはiDeCo
【少額投資非課税制度】つみたてNISA(積立ニーサ)とは?
つみたてNISAとは、2018年1月から新たに開始された少額投資非課税制度です。
長期・積立・分散投資を支援するための制度で、少額から資産運用を始めることができます。
運用商品は金融庁が規定した厳しい条件をクリアした投資信託で、購入時手数料が無料(ノーロード)だったり、運用コストを低く抑えられた商品に限定されています。
投資初心者にとっては商品が選びやすく、比較的始めやすい制度でもありますね。
また、NISAとつみたてNISAは年齢上限がないため、50代・60代の方であっても問題なく利用することができます。
利用する金融機関によっては100円からでも運用できるので、少額投資をしたい方にも向いています。
つみたてNISAの非課税投資枠は年間40万円までが上限となり、大きく投資することはできませんが最長20年間、運用益を非課税にすることができます。
長期運用による税制メリットが大きいことが、つみたてNISA最大の魅力とも言えますね。
つみたてNISAのメリット
- 年齢上限なく、幅広い層が利用できる
- 最長20年間も運用益を非課税にできる
- 厳選された投資信託で選びやすい
- いつでも解約(売却)することが可能
つみたてNISAは、長期にわたって運用で得た利益を非課税にできますが、売却するタイミングも自分で決めることができます。
基本的には売却せず積み立てを続けることがベターですが、万が一に備えていつでも引き出しできると安心できますね。
つみたてNISAのデメリット
- 運用できるのは投資信託のみ
- 余った非課税投資枠は翌年に持ち越せない
- 他口座との損益通算ができない
- 購入は積み立てしか選べない
つみたてNISAは年間40万円までの非課税投資枠がありますが、仮に30万円までしか投資できなくても余った部分を翌年に持ち越すことはできません。
翌年になると新たな非課税投資枠40万円に切り替わることになりますね。
また、年間40万円を超える投資もできないため、大きく投資したい方には少し不向きです。
【少額投資非課税制度】NISA(ニーサ)とは?
NISAとは、2014年1月からスタートしている非課税制度になります。
こちらの制度は、つみたてNISAと同様に運用益が非課税になりますが、非課税になる期間は最長5年と短めです。
NISAは非課税投資枠が年間120万円まであるので、つみたてNISAよりも投資できる金額が多いことが特徴ですね。
また、運用できる金融商品のラインナップがかなり豊富で、投資信託だけでなく株式やETF・REITなどへ投資することもできます。
購入方法は積み立てだけに限らず、好きなときに商品を買うことも可能なので自分のスタイルに合わせた運用が行えます。
任意に購入できると相場が下落したタイミングで積極的に投資できますから、少しでもリターンを狙っていきたい方には便利ですね。
NISAは運用期間が短いため、短期~中期での運用をする目的で利用するのが望ましいでしょう。
投資に使える資金にゆとりがあり、自由度の高い運用を始めたい方にはNISAが向いています。
NISAのメリット
- 運用できる商品ラインナップが豊富
- 年間120万円まで投資できる
- 積み立て以外に任意のタイミングで購入することも可能
- いつでも解約(売却)することが可能
NISAはある程度まとまった投資資金で運用できる場合に適した制度と言えます。
非課税期間も最長5年と短期運用になるので、なるべく早く利益を出したい方はNISAが選択肢になりますね。
積立+都度購入で投資タイミングを選べる点もNISAの強みです。
NISAのデメリット
- 非課税期間が短く、長期運用に向かない
- 商品の選択肢が多く、初心者は選びにくい
- 余った非課税投資枠は翌年に持ち越せない
- 他口座との損益通算ができない
基本的にNISAは「短期運用」ですから、つみたてNISAのような「長期運用」には適しません。
また、商品の選択肢が多いことはメリットですが、投資初心者にとってはデメリットと感じる部分でもあります。
投資経験者でなければ、NISAでの運用は少しハードルが高いかもしれませんね。
【個人型確定拠出年金】iDeCo(イデコ)とは?
iDeCoとは、老後生活に備えて資産形成ができる私的年金制度になります。
公的年金とは違って加入は強制ではありませんが、節税効果が非常に高いことで加入者も増加しています。
iDeCoは運用益の非課税をはじめ、掛け金が全額所得控除になるので確定申告によって、所得税と住民税を軽減させることができます。
また、受取り時も各控除の適用により一定額まで非課税にできるため、税制メリットではつみたてNISA・NISAよりも優遇されていますね。
iDeCoで運用できる期間は20~60歳までで、毎月5,000円からの少額で始めることが可能です。
掛け金の上限は自身の加入区分(会社員・自営業者など)によって異なり、月額12,000円~68,000円となっています。
運用する商品は投資信託に加えて、元本確保型の定期預金があるのでリスクを避けたい方でも安心して運用できます。
老後資金を作りつつ、しっかり節税も行っていきたい場合はiDeCoの運用を検討するのがいいですね。
iDeCoのメリット
- 他と比較して節税効果が最も大きい
- 商品が少なく、初心者でも選びやすい
- 20~60歳までと運用できる期間が長い
- 元本確保型商品(定期預金)で運用も可能
iDeCoは積立時に掛け金の全額所得控除、運用時に得られた利益の非課税、受取時に一定額まで非課税という3つの税制メリットがあります。
特に受取時は「公的年金等控除」または「退職所得控除」が適用されるので、税負担を大きく軽減できることがありがたいですね。
iDeCoには元本確保型商品も用意されていますから、投資によるリターンより節税を重視したい方には最適な投資制度と言えます。
iDeCoのデメリット
- 原則60歳まで引き出せない
- 加入区分によって投資上限額が低くなる
- 加入時・運用中等で手数料がかかる
- 60歳以上の方は加入できない
iDeCoで積み立てた資産は老齢給付金として受け取るため、原則60歳以降にならないと引き出すことができません。
加入期間が10年に満たない場合は、支給開始年齢が引き伸ばされます。
また、iDeCoは自営業者でなければ投資上限額が低いため、もっと積み立てしたくてもできない場面が出てくるかもしれませんね…
節税できる投資制度、つみたてNISA・NISA・iDeCoの比較表
つみたてNISA・NISA・iDeCoについてご紹介しましたが、それぞれの制度内容をわかりやすく比較して一覧にしてみました。
つみたてNISA | NISA | iDeCo | |
対象者 | 20歳以上 | 20歳以上 | 20~60歳 |
最低積立額 | 100円~ | 100円~ | 5,000円~ |
投資上限額 | 年40万円 | 年120万円 | 月1.2~6.8万円 |
投資可能期間 | ~2037年 | ~2023年 | ~60歳 |
非課税対象 | 運用益 (最長20年) | 運用益 (最長5年) | 運用益 受取時の一定額 |
掛金所得控除 | × | × | 〇 |
運用商品 | 長期・積立・分散に適した投資信託 | 投資信託 上場株式・ETF・ETN・REIT | 投資信託 定期預金 |
購入方法 | 積立 | 制限なし | 積立 |
出金制限 | なし | なし | 原則60歳以降 |
※つみたてNISA・NISAの最低積立額は金融機関によって異なります。
つみたてNISAがおすすめできる人
- 投資初心者でまずは少額から始めていきたい
- 定期的な積立でコツコツ安定的に運用したい
- 10年以上先を見据えて資産を増やしていきたい
- 商品選びで失敗したくない
- 資産はいつでも引き出せるようにしておきたい
つみたてNISAは長期・積立・分散投資を支援する制度であり、将来の資産形成を目的に運用することになります。
運用すると言っても、あらかじめ積み立てする銘柄を決めて毎月自動的に買い付けを繰り返すのが基本ですね。
金融機関によっては100円からでも積立を始めることができるため、投資初心者でも運用することは難しくありません。
また、取り扱い銘柄は金融庁が規定した厳しい条件をクリアした投資信託のみで、多くても150銘柄ほどですから、選びやすいことも初心者向きと言えます。
資産の引き出し制限がないことも安心して運用できるポイントですね。
少額から長期的にコツコツ積み立てして資産を増やしたい方は、つみたてNISAの運用を始めるのがおすすめですよ。
NISAがおすすめできる人
- まとまった資金があり、今すぐ運用を始めたい
- 株式への投資や売買タイミングは自分で決めたい
- 数年後の近い将来に備えて資産を増やしたい
- 資産はいつでも引き出せるようにしておきたい
NISAは5年後を見据えて資産形成ができる短期向きの運用に適しています。
購入方法も積み立てに限定されていないので、まとまった資金をすぐに運用に回すことも可能ですね。
例えば、つみたてNISAだと1~12月で毎月最大33,333円が積み立ての上限金額ですが、NISAなら一度に120万円を投資することもできます。
自分のタイミングで購入したい方も中にはいますから、つみたてNISAよりも使い勝手が良い場合もあります。
また、投資信託以外に株式へ投資することもできるので、より幅広い金融商品に分散投資できることも魅力です。
短期的なリターンを目指しつつ、数年後のライフイベントに備えるならNISAで運用するのが最適と言えますね。
iDeCoがおすすめできる人
- 早いうちから老後資金の準備を始めたい
- 所得控除を受けつつ、資産も増やしていきたい
- 公的年金以外の備えとして積み立てておきたい
- リスクを避けて定期預金で安定的に運用したい
- 60歳まで資金拘束されても特に問題ない
iDeCoは老後資金をつくることを目的とした私的年金制度なので、公的年金や退職金だけでは不安…という場合に利用したい制度です。
運用資産は60歳まで引き出しできませんが、老後の備えが目的ですから、資金拘束されることはあまり問題に感じないかもしれません。
運用する商品には投資信託の他に定期預金もあるので、安心して運用を続けることができますね。
また、iDeCoには掛け金の全額所得控除があるため、毎年の所得税・住民税の負担を軽減できるのが嬉しいところ。
仮に積み立てで運用益が思ったほど得られなくても、節税効果だけで十分な利用価値がありますね。
iDeCoは税制メリットが大きい分、自営業者以外は掛けられる金額が多くて月23,000円と低めですが、投資で税金対策ができるおすすめの制度です。
つみたてNISA・NISA・iDeCoの始め方
つみたてNISA・NISA・iDeCoを始めるには、取り扱いのある銀行や証券会社などの金融機関を利用することになります。
ただ、取り扱い商品・運用時の手数料面・使い勝手などを考慮すると、ネット証券を利用するのが断然おすすめですね。
例えば、主要ネット証券の「松井証券」だと、つみたてNISA・NISA・iDeCoのすべてに対応しています。
まずはネット証券口座を無料開設する必要がありますが、オンライン上で数分あれば簡単に申し込みできます。
松井証券の場合は総合口座(ネットストック口座)の開設と同時にNISA口座の開設申し込み(無料)ができますよ。
【注意】つみたてNISAとNISAは併用できない
NISA口座は「1人1口座」しか開設することができません。
なので、つみたてNISAかNISAのどちらにするか、NISA口座開設時に決めることになりますね。
仮につみたてNISAで開設してから、やっぱりNISAにしたい…ということも考えられますよね。
その場合は、1年単位になりますがそれぞれ変更することは可能です。
ですが、つみたてNISAですでに投資信託を購入してしまった場合は、翌年になるまで変更することができません。
これは金融機関の変更に関しても同様の条件になっているので、NISA口座を利用するときは注意しましょう。
つみたてNISAは早く始めた方がお得です
つみたてNISAは2019年10月1日現在、投資可能期間が2018年~2037年までとなっています。
投資可能期間は、投資信託を購入できる期間のことです。
つまり、制度改正がない限りは2037年以降は投資することができません。
つみたてNISAを始めるのが1年遅れるごとに、年間非課税枠40万円を1つ失うことになるため、始めるなら早いに越したことはないですね。
迷われている方はまずNISA口座だけでも開設しておいて、すぐに投資できる準備を済ませておくことをおすすめします。
松井証券をはじめ、ネット証券であればオンラインから無料口座開設をスムーズに行うことができますよ!
iDeCoは資料請求して申し込む必要あり
iDeCoはNISA口座とは違って、資料請求の申し込み手続きを行うことになります。
オンライン上の申し込みページから加入者情報や年金情報などを入力、その後に「加入申込書類」が送付されてきます。
【加入申込書類】
- 個人型年金加入申出書
- 預金口座振替依頼書 兼 自動払込利用申込書
- 掛金配分指定書
- 事業所登録申請書 兼 第2号加入者に係る事業主の証明書 など
※被保険者区分ごとに提出書類は異なります。
これらに必要事項を記入して、同封の返信用封筒で返送すると、国民年金基金連合会で審査等が行われることになります。
なお、ここの手続き完了までに1~2ヶ月ほどかかることになりますね…
iDeCoはとにかく最初の手続きが面倒であることがネックですが、ここさえ完了すれば掛け金の引き落としを開始できるので、節税のために頑張りましょう。
【注意】iDeCoは新規加入時に手数料がかかる
iDeCoに新規加入するときは、国民年金基金連合会に2,829円(税込)を支払う必要があります。
これは企業型確定拠出年金からの移換時にもかかる費用で、どの金融機関を利用しても共通で発生する手数料になっています。
これは必ず支払うものなので、iDeCoに加入するときは覚えておいて下さいね。
iDeCoの運用時にかかる手数料は金融機関で差がある
もう1つ注意しておいてほしいことは、iDeCoの加入後に毎月発生する手数料です。
例えば先ほどご紹介した松井証券を例にすると、以下のような手数料が発生します。
支払先 | 手数料(税込) |
国民年金基金連合会 | 月105円 (各社共通) |
運営管理手数料 | 無料 |
信託銀行 | 月66円 |
合計 | 月171円 |
※新たな掛金を拠出していない場合は月66円のみ。
ここで注目するべきは「運営管理手数料」の部分です。
運営管理手数料はiDeCoを利用する金融機関に支払う手数料ですが、ここが無料なのは松井証券をはじめとしたネット証券を含む一部の金融機関のみ。
高いところだと月400円~600円かかるため、長期運用になるとかなりの「コスト差」になりますね。
運営管理手数料のことを確認せずに始めてしまうと、損をしてしまう可能性があるのでiDeCoの手数料は事前によく確認しておきましょう。
松井証券のような主要ネット証券なら運営管理手数料は基本的に無料なので、iDeCoを始める場合はおすすめですよ。
個人的にはまず、つみたてNISAから始めるのがベスト
私の結論としては、つみたてNISAが一番手軽で続けやすい制度だと感じています。
NISAは年間非課税枠が120万円あるので月計算だと10万円を投資できますが、枠をムダなく使い切るには結構な資金が必要ですよね…
短期集中型の投資としてはアリですが、個人的には毎月少額でコツコツ運用を続けていくスタイルがいいかなと。
積立期間が長くなれば複利効果も大きくなりますし、目先の利益に一喜一憂する必要がないので、精神的にもゆとりある運用が行えます。
つみたてNISAの運用自体は積立設定を済ませて、あとは毎月自動で買い付けるだけですから、ほとんど手間がかからないことも魅力ですね。
定期的に運用成果を見つつ、必要であればポートフォリオ(資産の組み合わせ)のバランスを調整するくらいです。
節税効果だけを見るとiDeCoの方が魅力的ではありますが、始めるまでのハードルが結構高いので投資初心者だと苦戦することも…
また、iDeCoを始める個人的な基準としては、安定収入や余裕資金がないとなかなか始めづらいですね。
もちろんその条件がクリアできる方は税制メリットが大きいので、すぐに始めて損のない制度ですよ。
つみたてNISAの運用実績も公開しています
私が実際に積み立てしている銘柄は以下の5つになります。
- ひふみプラス
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド
- eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
- eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
- eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
特にeMAXIS Slimシリーズは業界最安水準のコストなので、つみたてNISAでおすすめの投資信託ですね。
運用実績の詳細は以下の記事で解説していますので、気になる方は今後の参考にされてみて下さいね。
まとめ:つみたてNISA・NISA・iDeCoの投資で節税しよう
- 初心者なら少額投資で始めやすいつみたてNISA
- 短期でまとまった資金を運用するならNISA
- 所得控除など、節税効果が大きいのはiDeCo
消費税が10%に増税されたことで消費者の負担が増え、今まで以上に税金対策について考えることが重要になってきます。
つみたてNISA・NISA・iDeCoの3制度は、ここでご紹介したように投資・運用することで節税効果に期待できます。
運用益を非課税にすることで受け取れるリターンが多くなり、効率的な資産形成を行っていくことが可能です。
また、iDeCoに関しては掛け金の全額所得控除があるため、所得税・住民税を軽減できますから税金対策としては効果抜群ですね。
今の税負担を減らしつつ、将来に残るお金を少しでも増やすには、つみたてNISA・NISA・iDeCoの利用が欠かせません。
まだ利用されていない方は、この機会に投資で節税をスタートされてみて下さい!